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所長ブログ「ケンさんが往く」
2023.04.05
各国の特許出願に対する審査はそれぞれ独自の基準で行われています。
新規性はそのものずばりですから、あまり問題がありませんが、進歩性がありやなしや、という点については、各国の審査にばらつきがあります。各国で審査基準が異なっているとともに、審査官個人の見解によるバラツキもあります。
最終審査の結果に対しては、大抵の国で不服を申し立てる道があるのですが、余分な出費が必要なため、できれば審査段階で決着をつけたいところです。
弊所では外国出願する案件については原則日本国内で出願と同時に早期審査をかけて早期に特許を成立させておきます。反論できないような引例が出されて、拒絶が見えている場合には、外国出願を行いません。外国の審査は日本とは基準が異なり、引例も日本のものとは異なるものが出るとはいっても、日本の審査で出た引例は各国(特に中国や韓国)の審査官がウォッチしており、また、日本の審査でその発明の価値がある程度は判断できるからです。
それと日本では業界内で同じような出願をしている場合が多く、特許庁の調査能力もある程度以上信用できるので、日本で拒絶が見えている出願では外国出願しても拒絶される可能性が高いため、原則この場合は外国出願することを薦めません。
主要な審査国である米国、欧州、中国、韓国で、私の経験上、米国と韓国は、日本で特許になったような出願であれば比較的特許になることが多いです。それに対して、欧州と中国は日本で特許になっている出願でも、拒絶になることが良くあります。
その理由は、どうもこの両国は進歩性を業界水準で判断するのではなく、純粋に工学理論水準で判断しているような気がします。つまり、発明の属する技術分野の当業者のレベルで従来にない技術的効果を生じれば進歩性を認めるというのではなく、工学的見地から新たな効果を奏しているか否かで進歩性を判断しているような気がします。
東南アジアの各国に関しては、日本で特許になっている発明であれば、PPH(patent prosecution highway)を申請することによって、現地での実体審査無しで早期に特許を受けることが可能です。