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所長ブログ「ケンさんが往く」
2023.11.25
私が10年勤めた会社を辞めてこの業界に入った昭和57年(1982年)当時は、日本の特許出願件数がうなぎ上りに増えていた時期であり、その3年後の1985年には30万件/年に達しています。その頃は日本の産業も米国を上回るような活況を呈していたような気がします。
ところが近年の統計では日本の特許出願件数は30万件程度で頭打ちで、いつも間にか中国に大きく水を開けるあけられ(中国の出願件数は日本の5倍)、アメリカにもはるかに及ばない(アメリカは日本の2倍)状況です。
韓国、欧州は日本より少ないものの、その差は米中に較べるとわずかです。
このような特許出願件数の現状を見ると、日本の産業の沈滞ムードも、さもありなんと思われてきます。
これに対して、中国は出願バブルで日本は真に特許性のある出願のみを厳選して出願しているとの反論もあり得ます。が、特許の価値というのは出願時には正確にわからないことが多いのです。特許性の程度はどうかなと思われた発明が先行の類似技術が見つからず目出度く特許になったところ、大きな経済効果を発揮して重要特許として見直された、なんて話は日常茶飯事です。
やはり特許出願が多い方が、そういう「重要特許」が生まれる確率は高いのではないでしょうか。
考えてみれば、不景気な時に将来を見込んで特許出願するなぞということはあまり考えられませんね。明日の夢より今日のご飯です。
これに対しては、人口が違う、という反論もあり、確かに中国の人口は日本の5倍くらいですよね。そう考えると、出願件数は人口比でほぼ収まるところに来ているのではないか、という論も確かに一理ありますね。
しかし資源に恵まれない日本が生き抜く道は人間の知恵(知的財産)の有効利用しかない、と言われて久しいことを考えると、人口比に応じた特許出願件数で良しと満足しているのはいかがなものかとも思います。