所長ブログ「ケンさんが往く」

2023.12.10

中国の審査レベル

特許出願件数の多さがその国の産業の活発さを示していると以前のブログで書きましたが、一方、出願審査のレベルはその国の産業の高度化の程度を示しているのではないかと思います。

 

私が事務所を開いた25年ほど前は、審査レベルの高い国は欧州、米国と日本でした。その三極は長らくその地位を占めており、現在もその地位を維持していますが、ここにきて中国の審査レベルが急速に上がってきていることを感じます。

 

審査レベルは特許でいえば、審査官の技術理解力、先行技術の調査能力、拒絶理由の理論構成力であると思いますが、中国の審査官は博士号を有している者も多いと聞きますので、技術理解力はあります(ただ、産業上の効果よりも学術的な効果を重んじる傾向があり、ある意味厳しめ、という傾向はありますが)。調査能力も、英語や日本語にも通じているため、欧米の特許公報に加えて日本の特許公報を先行文献として引かれることも多いです。拒絶理由の理論構成力(何を主たる先行文献として、進歩性の拒絶理由を構成するか)も結構高いです。

 

なので、今や日米欧の三極に加えて日欧米中の四極になりつつあります。ただ、特許の訴訟レベルで世界の耳目を集めるような判例は、私が知らないだけかもしれませんが、日米欧に未だ追いついていない感じではあります。しかし、これも追いついてくるのは時間の問題でしょう。

 

日本が四極の一極を将来も担うためには、同じアジアの一極である中国とはお互いに友人として切磋琢磨することが必要でしょう。